阪神・淡路大震災で失われたモノ、残されたモノ、生まれたモノ…そんな記憶を記録します。

青池 憲司 監督作品 映画『宮城からの報告—こども・学校・地域』製作委員会

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コラム・撮影報告

石巻撮影報告
11/24

床屋談義

text & photos by 青池憲司

2011.11.24  up

風のまち

石巻は「風のまち」です。このところ連日、風速10メートル強の風が吹いています。門脇小学校の校庭から見る、日本製紙石巻工場の煙突が吐き出す煙は上に昇ることなく、真横に流れていきます。

そんな風のなか、校庭のこどもたちは、サッカー、ドッヂボール、縄跳び、鬼ごっこに興じています。ふいに、数人がわけもなく(と、わたしには見えるのですが)走りだします。それが、20人以上に増えていったりします。全力疾走です。西部劇映画にある牛の暴走場面というと大げさですが、若いいきものが力いっぱい走る姿はきもちいいですね。ここんとこ、そんなactionを撮りつづけています。

床屋談義

以前、被災地石巻では、まだ「散髪やハヤシ」と「立ち飲み森下」を見つけていないと書きました。上記2軒は、被災地KOBE野田北部地区撮影時の行きつけの店で、いまでも年4回は行ってます。ここ石巻でもそんな親しくなれる店がほしい、とつねづね思っていました。黒川郡大郷町から、11月3日に石巻市内へ引越して、それがかないました。

散髪屋さんは、「さくら理容」といって、門脇町2丁目にあります。津浪と火災でやられた門脇小学校のすぐ近く、門小校区の一画です。家屋は流されなかったものの、1階天井まで水につかり(避難した高台でそれを見ていた)6月末の仮再開を経て、10月初めに本格営業になったそうです。初老の夫婦ふたりでやっている(ハヤシさんとおなじ)そのお店できのう髪を切りました。8月初めに、野田北部で散髪して以来ですから3か月半ぶりです。白髪頭が刺激されました。

先客がいて、理髪師との話題は「石巻市震災復興基本計画(素案)」をめぐる住民と行政の攻防です。この素案についての意見交換会(震後2回目)が、いま市内各所で開かれています。門小の児童と家族の生活にかかわることであり、これを撮影しています。髪に触ってもらいながら、床屋談義の傍目八目に耳を傾けると、そこには、住民感情が鋭いことばとなってあふれています。白髪頭が刺激されます。

散髪屋や酒場での世間話は、長い期間のロケーションに欠かせません。酒場も、立ち飲みではありませんが、よきところを見つけました。これについては次回に。

きょうの最高気温は7℃、教室に暖房が入りました。

#文中に登場する名称・データ等は、初出当時の情況に基づいています。

青池憲司

ドキュメンタリー映画監督。震災後、親交のあった長田区の野田北部・鷹取地区に入る。"野田北部を記録する会"を組織し5年間に渡りまちと住民の再生の日々を映像で記録。
「記憶のための連作『野田北部・鷹取の人びと』全14部」(1995年〜99年,山形国際ドキュメンタリー映画祭正式招待作品)を発表、国内外で上映。2002年「日本建築学会文化賞」受賞。

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